沖縄県においては、オキナワモズク(Cladoshipon okamuranus Tokida)の養殖が行われ、それより抽出されたフコイダンが健康食品として市販されている。その薬理活性としては、制癌作用、抗菌作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、降圧作用、コレステロール低下作用などが報告されているが、現在のところその機序の詳細は不明である。
琉球大学医学部第一内科では、フコイダンの臨床応用を進めるため、高品質のフコイダンを製造・販売しているうるまバイオ株式会社と共同で、現在、様々な検討を行っている。
今回は、その中で、腸管上皮細胞に対する保護作用について述べる。
腸管上皮細胞は腸管の管腔内に存在する無数の腸内細菌や食餌抗原等から生体を守るバリアとして働いており、粘膜防御機構において重要な役割を果たしている。一方で、腸管上皮細胞のバリア機構が破綻すると腸管に炎症が発生し、それが慢性化すると、炎症細胞からのサイトカイン・エラスターゼ・ディフェンシンなどの放出により更に上皮細胞が障害され、潰瘍性大腸炎など様々な病態をきたすと考えられる。我々は、フコイダンの有する抗酸化作用に着目し、その腸管上皮細胞の保護作用について検討した。
まず、腸管上皮細胞のバリア機能についてであるが、細胞と細胞の隙間にはタイトジャンクションという構造が存在し、そこにはclaudinなどの細胞接着に関与するタンパクが発現している。この構造によって細胞間は密接に接着しバリアとしての機能を保っているわけであるが、我々は前述の潰瘍性大腸炎において、炎症が生じるとタイトジャンクションタンパクの発現が低下することを見出した。(図1)

そこで、潰瘍性大腸炎のように炎症で腸管上皮が傷害される状態、すなわち酸化ストレスで腸管上皮が障害されるモデルを作成した。(図2)

このモデルを用いて、まず酸化ストレスを加えず、培養液にオキナワモズクより抽出したフコイダンを細胞表層側に添加し腸管上皮細胞の培養を行った。その結果、通常の培養液で培養した場合と比べて、フコイダンを添加した培養液ではタイトジャンクションが強固になっていることがわかった。(図3)

このことからフコイダンは抗酸化作用を有するということ以外に直接細胞に働きかけてタイトジャンクションタンパクの発現を亢進させることが示唆された。
次に、酸化ストレスを加えて細胞を培養すると、タイトジャンクションは傷害されるのであるがフコイダンを加えると、障害は強く抑制されることがわかった。(図4)

この障害の有無を確認するために、細胞の隙間を微細なビーズが通過するかをみたところ、やはりフコイダンを添加して培養した細胞では、ビーズの通過は抑制された。(図5)

更に、酸化ストレスを加えた腸管上皮細胞で、タイトジャンクションタンパクの一つであるclaudin-1の発現をみると、フコイダンを添加した上皮細胞で、その発現は保たれていた。(図6)

以上より、フコイダンは腸管上皮細胞を保護する効果があることが明らかとなった。タイトジャンクションタンパクは、当然のことであるが、皮膚にも存在しており、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性炎症でも低下することが知られている。このような疾患に対してフコイダンの経口投与で炎症を抑え、外用(注腸や塗布)で上皮細胞を保護するといった治療応用を検討していきたいと考えている。

